瞬間に懐中電灯を持って玄関に向かい、右側の非常階段を一気に駆け下り、非 常ドアを開けて戸外へ・・と思いきや、なんとそこは地下1階の駐車場だった。 かなり慌てていたのだろう、1階を通り越してしまったようだ。階段を駆け登 り、今度はうまく1階から外に出られた。やけに心臓が高鳴っている。 揺れがおさまり、そして心臓の動悸もしばらくしておさまったので、台湾の同 僚を探したが、どうやら誰も外に避難していないらしく見つからない。なんだ か慌てて飛び出したことに気恥ずかしさも覚えたので、、部屋に戻ることにし た。

急に疲れがでて、ベッドに横になった。しかし、眠れな い。妙に興奮して・・。ベッドに横になってしばらくして、またグラッときた。 緊張して身構えていると、それはさほど大きくもなく、しばらくしておさまっ た。この後、余震は絶え間なく起きた。そのたびに身構える・・。10回目と15 回目はかなり大きかった。後の記録を見ると震度4程度はあったようだ。結局 21回まで数えた後に眠ってしまったらしい。電話の音で飛び起きたのは、まだ 夜も明けやらぬ5時過ぎだった。

宿舎にしているこのビルは、このあたりでは最も大型の6階建てマンショ ンで、しかも完工してさほど経ってないビルなので、そう簡単には倒壊はしな いだろうし、2階が宿舎なのでいざとなっても逃げきれるだろうとそのときは 思った。しかし、それがいかに危険であったかを、後に知ることになるのだが ・・。しばらくすると、マンションの住民が外で大声で騒いでいる。そのうちに、地 下の駐車場から次々と車が飛び出してきて、何処かへ行ってしまった。また、 辺りに静寂が戻った。

それは、日本に居る家内からの電話だった。 なんでもNHKの朝6時(台湾とは時差が1時間)のトップニュースで台湾で大地 震が発生し、死亡者が多数でたと報道してるとのこと。そして、台北市のビル が倒壊し、死者が出ていることを知った。とにかく、無事であることを告げ、 そして実家にも無事であることを連絡した後、睡魔に勝てずまた寝てしまった。



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